2008年 04月 16日
阿久悠の悩ましい問題
気絶するほど悩ましい というヒット曲(1977年) これが関係しています。
さて、「悩ましい」という言葉は、「なまめかしい」とか、「色っぽい」という意味なので、政治問題などで「悩ましい問題ですね」というと、それは政治じゃなくて性事になっちゃうよ~、ということを聞きました。
私は官能の意味でも頭を悩ますことでも、両方とも悩ましいと言うと思っていたので、「頭を悩ます」ほうが誤用だと聞いてちょっとびっくり。聞いたときは「へ~、そうなんだ~、これから気をつけなくちゃ」と思っただけでしたが。
しかし、どうも気持ちの中で納まりが悪い。
ふと遠い記憶をたどると、源氏物語には「気分が悪い」ときや、「頭を悩ませるようなこと」に「悩ましい」と言う言葉が使われています。
ちょっと調べてみたら、小林秀雄の「無常といふこと」の中に、頭を悩ませる意味で「悩ましい」が出ていたり、尾崎紅葉、室生犀星、阿部公房などにも「頭を悩ませる」という意味での例が出ているとのこと。(1890年代~1940年代)
http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/k010705.htm
古代では「頭を悩ませること」の意味の「悩ましい」が主流だった。尾崎紅葉、室生犀星、小林秀雄、阿部公房などの例もあるし、この用法は誤用ではないでしょう。
ところが、1950年代には「官能」の意味で使うのが正しくて、「頭を悩ませる」という意味で使うのは誤用だ、という人がいたようです。
http://yeemar.seesaa.net/article/13127559.html
そして、いつの日からか、悩ましい=官能を刺激する という意味(しかない)と言う人が多くなってきたようです。
上記のサイト(きょうのことばメモ)でも、60年代までは「悩ましい=頭を悩ませる」で使われている例を採取していますが、それ以降のものが少ないようです。
ここからは私の推測。(冗談ではなく、単なる推測です)
阿久悠作詞の「気絶するほど悩ましい」は、1977年6月に発売されました。
この曲は、明らかに、悩ましい=官能を刺激する 色っぽいこと です。
この曲が発売されたとき、私はまだ生まれていませんでしたが(うそ)、CHARが歌ったあの曲はよく知っています。カラオケでも時々歌います。(ホント)
いや、二十歳でしたからね、この曲が発売されたとき。
そのときの私の記憶をたどると、「悩ましいって、色っぽいこともいうんだ~」と思ったわけです。
おそらく、77年のこの曲のヒットが、「悩ましい」は「官能限定」だ、という認識を多くの日本人に与えてしまったのではないか、と思います。だってそれくらいインパクトがありましたからね。
実は「悩ましい」は、A「頭を悩ませる問題」にも、B「色っぽいこと」にも、両方使います。
古代はAが主流だったようですが、一時期その用法が途切れて、色っぽいこと限定が主流になりつつあった。そして1977年を境にB(官能的)が圧倒的主流になり、今ではA(頭を悩ます)は誤用だ、とまで言われてしまうようになったのでは。
(本来は、誤用じゃないんですよ。ただ、誤用だといわれてしまうくらい、Bの意味が広まってしまった、その広まった原因のひとつが、阿久悠なのではないか、(推量)ということです)
阿久悠、さすが~!!
番長も、阿久悠世代です(笑)
ジュリ-や、ピンクレディ-、流行りましたね~!!
CHARも、18歳でしたね(笑)
阿久悠、ご存知だと思いますが、悪友から来ていますよね(爆)
悩ましい=色っぽい悩み、としか思えなくなったのは。
私はどちらかというと筒美京平世代なので
詞、のほうに目が向いたのはここ数年です。
阿久悠は本当に素晴らしい作家だと
今更ながら思い知りました。
>(2)気持ちがはれない。悩みが多い。 「煩悶(はんもん)多き青春の悩ましい日々」
とあって、ふと思ったのは、どうもこの"悩ましい"というのは、単に「頭をなやまされる」事を表すのではなく、つまり、論理だけでは片付けられない感情というかもっと生き物としての人の内から湧き出てくるような、もどかしさとでも言うべき心の状態を表す言葉なのではという事なのでありました。
「悩まし」=難儀だ・苦しい・気分が悪い
「悩ましがる」=気分悪がる
「悩ます」=困らせる
とあって、「色っぽい」要素は全くなかったようですねえ。
日本人が、いつから「色っぽく悩み出した」のか、興味のあるところです(^^!
少し前に、上戸彩ちゃんが、CMで色っぽい意味ではなく「悩ましい」といっているのを聞いて、違和感を感じてしまったのは、確かに阿久悠の影響ですな。
いくら「なやましいじゃないの?」って言っても、「いや、色っぽいことを言うのは、のうましいでいいん。」といわれます。そうなんですか?
そうそう、古語では「頭を悩ませること」だったのに、阿久悠のせいで色っぽいこと限定、となったような気がします。まあ、両方の意味があるんですが、どっちか限定、ということは無いのにねー。
阿久悠のあの曲は、すごい影響力だと思います。
その辞書の例文も、「煩悶」が使われていると、悩みの中でもちょっと色気があるような気がしますよね。「今晩、何食べようかな」なんて悩みは煩悶じゃないけど、「今晩の食べるものをどう調達しようか、そのお金が無い…」となると悩みも深いですね。でも後者も「煩悶」とは違う感じ…。
悶えるような悩みとは違いますねえ。うーん。悩ましいなあ。
「のうましい」は「悩」に「ましい」をつけたものですか?
「ましい」というのは、「痛ましい」とか「望ましい」とか「厚かましい」と言うときの「ましい」ですよね。
どれも「痛む」「望む」「厚い」と言う、訓読みの漢字に「ましい」がついています。
つうましい ぼうましい こうましい とは言わないですよね。言ったらヘンです。
それと同じで、「悩」の音読み「のう」に「ましい」をつけるのは間違いだと思います。
「悩殺(のうさつ)する」=殺すほど色っぽい ということばがあるので、混同しているんじゃないでしょうか。
頭をなやますことは「なやましい」で、悩殺するようなことは「のうましい」と思っているのかも。
悩ましい=色っぽいこと限定 という意識が定着してしまったことの弊害でしょうか。
そのお友達にこの説明をしてみて、通じるかどうかわかりませんが、どうなるかなあ?
包み強兵…いえ、筒美京平もいいですよね~~~!
それにしても阿久悠、すごいです!
それと、先日亡くなった川内康範さん(あ、こっちはなぜか「さん」付け。他意はないんだけど…)の歌詞もいいですよね~~。
60代の方ですが、もうここまでくると、訂正できない気がします。
「リポビタン」を「リコビタン」と覚えている人もいます。
一度間違えて覚えると・・・・難しい。
使うべきではないと思います。
特に男性が言ったらセクハラ的に聞こえるので、女性は受け付けない人が多いと思います。
辞書では、官能的な意味も悩む意味も正解であっても、通例で使って来た人の気持ちを考えるべきだと思います。
逆に、昔、通例で使っていた言葉が「悩む」の方で、その後に通例で官能的な意味にも悩ましいが使われるようになって来た状況は問題ないと思います。
人々の多くが性的な意味を認識してなかったのなら問題ありません。
問題は、今だと思います。
また、かつて通例の使い方の性的な意味を知っている大人の男性は喜んで使うと思います。
堂々とセクハラ出来る感じで。
それが不快ですし、問題なのです。
言葉の問題というより、モラルの問題です。