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赤星たみこの戯言・放言・虚言日記♪ akaboshi.exblog.jp

漫画家・赤星たみこの日記です。 


by akaboshi_tamiko

学年誌 小学五年生

私の漫画家の仕事始めは、小学館の学年誌『小学五年生』だった。

まだ学生時代から、小学五年生の編集者と知り合い、読者ページのカットを描く仕事をいただいた。
全国の小学5年性からお便りを募集し、それに受け答えのコメントとイラストを描く、という仕事がデビューだった。付録の漫画も描いた。

そのときの担当編集者の言葉で、今も印象深く脳裏に残っていることがある。

「学年誌の仕事は、あらゆる年代の人が読むんだ。11歳の小学五年生だけが読むんじゃない。その子の親御さんや80歳のお祖母さんが読むことだってある。読者層が幅広いからこそ、面白いんだ」

「雑誌の仕事はいろんな人が読む。こちらは相手に怪我させたりしたら、とにかく謝るしかない。付録の袋をとめてあるホッチキスの針で指を刺した、というクレームが来たら、こっちは菓子折り持って謝りに行くしかないんだ」


この二つは、なぜか今も頭にしっかり残っている。
特に後者、ホッチキスの針を指に刺したなんて、こっちが悪いわけでもないのに、クレームつける人がいたら菓子折り持って謝りに行く、というのは、印象深かった。30年前の日本と、現在の日本ではちょっと考え方が違っていると思うけれど。

今でこそクレーマーとかモンスターペアレンツの存在が言われ始めたけれど、30年前は、読者のうっかりミス、読者の読み違え、読者の間違いによるクレームだって、出版社側が「こちらの説明ミスでした」と謝らねばならない、という意識が強かったのだ。

まだ二十歳だった私は、その言葉を聞いたとき、「プロって、そこまで読者のことを考えるんだ」と、妙に感動したのだった。そして、それは私の書くものや、読者への態度を、ずっと縛っていると思う。

私は以前、教えてチャンに対して親切すぎる、という批判を受けたことがあった。
私が運営しているエコや石けん系掲示板で、細かな質問をしてくる人に対して、いろいろ答えるけれど、それが親切すぎる、というのだ。

私は漫画家の出発地点で、そういう風に教わったのだ。親切にしているつもりもなく、ただ、出版にかかわる者はそういうふうにするもんだ、と30年前に思い込んだのだった。

読者には徹底的に親切にするという言葉は、雛鳥が初めて見た動く物体を母鳥と思い込むように、まだ何も先入観の無かった二十歳の私の頭にインプリンティングされてしまったのだった。

今となっては、それが私の漫画家としての立場や可能性をかなり縛っているような気がしないでもない。時として説明っぽい漫画になってしまう。逆に、説明が必要なハウツー物は「わかりやすい」と言われる。

良かったのかな、悪かったのかな。

小学五年生の休刊のニュースに、漫画家になりたてのころを思い出してしまった。
Commented by じゅえる at 2009-12-20 06:19 x
はじめまして。
先日、学研の雑誌が休刊ってニュースで知ってショックだったんですが、小学館も、ですか!

ご時世とはいえ、寂しいですね。

赤星先生の思い出、私にも似たような体験があり、この記事を読んで、しみじみしました。

それは、昔、高校生のころにデパートで販売のバイトをしてた時のことです。

どこで見ていたのか、売り場では日頃見かけない、でも明らかにそのデパートの上層部の方が、私の前に来られて、
「キミ、ちょっと笑ってごらん。」
と、にこやかにおっしゃるので、ニッ!と笑って見せたら、
「できるじゃないか^^。その笑顔忘れるなよ。売り場ではどんな時でもお客様が見ておられるんだから、笑顔を絶やしちゃいかんぞ。」
と、さりげなく忠告して去って行かれました。

その日私は、少し体調が悪かったので、きっと苦虫噛み潰した顔をしてたんでしょうね。

当時私は16で、高校1年でしたが、今も忘れられない思い出です。

そういう心に残る一言が、その後の生き方や仕事の仕方を変えるきっかけになるものなんでしょうね。

Commented by 日之影人 at 2009-12-23 09:14 x
おはようございます!
昨夜、建設組合の執行委員会&忘年会だったのですが
たみこさんの話をしていたら偶然そこに居合わせた人が
「あ~知ってるよ。ほら」と持っていた建設雑誌かチラシを
見せてくれそこにたみこさんの書いた四コマ的な画が!
偶然過ぎてびっくり!
なんか誇らしかったです!
Commented by くまくま at 2009-12-24 10:15 x
漫画家は学生時代にデビューする人が当たり前にいますね。
東京五輪を境に映画からTVに才能がいったように今は漫画へいったのかなぁ~
Commented by 天丼 at 2009-12-26 09:51 x
こんにちは。久しぶりにコメントさせて頂きます。

こういう考え方の雑誌が休刊してしまうのは、淋しいですね。
編集者さんの仕事などへの愛情を感じます。

以前送らせて頂いたコピー本(お忘れかも・・・、古い話ですみません(汗))が、本にして、市内の幼稚園から高校くらいまでの学校に置いてもらえる事になりました。

これから、同じ話を紙芝居として作ったカラー版を描き直したりして、完成させます。

日記の内容の様に、子供への愛情を込めて、描きたいです。
自分の事ばかりの内容で、失礼しました。
Commented by akaboshi_tamiko at 2009-12-26 23:13
★じゅえるさん
お返事遅くなってすみません。
いい上司の方ですね! さりげない忠告が出来る上司って、そう居ませんよね。私もそうなりたいのですが、なかなか…。

★日之影人さん
それは日経ホームビルダーですか?
もう10年ほど広告の仕事をしています。おかげで建築関係(個人住宅ですが)にはちょっと詳しくなりましたよ(*^_^*)

★くまくまさん
60年代には映画に行く才能が劇画に行き、それが花開いた70~80年代。90年代以降は、漫画に来るべき才能がゲームに行った、というのが私の読みです。
2000年代に入ってから、いろんな才能がネット(ブログ)に分散しましたね。もったいないような、いいことのような…。どっちなんだろう…。

★天丼さん
お久しぶりです!
読者への気配りを忘れないよう、私も頑張らねば。
紙芝居のカラー版、頑張ってくださいね。
Commented by pon at 2009-12-29 14:19 x
学年誌の読者ページの赤星先生、覚えています~!
たまにしか買って貰えなかったので隅から隅まで読んでました。
お姉さんと同居さてれいませんでしたか?そんなエピソードが記憶にあります。
Commented by akaboshi_tamiko at 2010-01-04 22:09
★ponさん
うわ~、そんな昔の私の記事を覚えてくださって、ありがとうございます!
そうです、姉と二人暮らししていました! 昔は学年誌を買ってもらうって、すごく嬉しいことでしたよね。隅から隅までじっくり読んでくれた読者のかたが、また面白いはがきをくれるんですよ。ああいう密なコミュニケーションが出来た時代が懐かしいです。
by akaboshi_tamiko | 2009-12-19 12:45 | 仕事 | Trackback | Comments(7)