おろし蕎麦としょうが焼き定食
その話を書こうと思ってたんだけど、その前に、千葉市美術館へ行く途中で入ったお蕎麦屋さんの話を。
国道沿いに、わりあい大きな店構えの、立派な蕎麦屋がある。何年も前からある店で、何度もその前を通ったことがある。でも、まだ入ったことが無い店だ。
おなかが空いていた私と夫はその店でお昼を食べることにした。
時刻は1時25分。
昼時なのに空いているのが不安だなあ、と夫。
でも、12時台で空いていると心配だけど、1時半近いんだもん、客も空くころだよ。大丈夫じゃない? と言いつつ入ったのだった。
わたしはおろし蕎麦、夫はしょうが焼き定食を頼んだ。
カウンターに毎日新聞と読売新聞が置いてあり、それを読みながら待っていた。
二人で新聞を取り替えて、同じ事件についての記述の違いや、編集者の雑感を書く欄などを読み比べたり、ホント、珍しく新聞をじっくり読んだ。
・・・つまり、それだけ待った、ということだ。
遅い。
客数はそれほど多くなかったのに、何でこんなに時間がかかるのか? 30分ほど待って、「出ようか・・・?」と口に出した。今日の田中一村展はかなり混んでいるらしく、できれば3時前、2時半くらいには着きたい。今、2時チョイ前だ。
食べて、千葉市内まで行って、駐車スペースを見つけて、となると3時過ぎるかも?
と、そこへ私の頼んだおろし蕎麦がきた。
おろしがたっぷりついていて、刻み海苔が載っている。小皿に山葵と小口に切ったネギ。
これは美味しそうだ! そう思って蕎麦を口に運んだとたん、軽い違和感が。
甘い! 妙に甘い!! 一瞬、甘さがパアッと口の中に広がる。決して出汁の甘さではない。そして、ちょっとベタッとした食感もある。
夫もその蕎麦を一口食べてた。
二人で一瞬黙って、顔を見合わせた。
「これ・・・・・・」
「うん」
「蕎麦の香りしねえな」
「うん、全然」
二人とも空腹だったのに、蕎麦が美味しく感じられない。
妙な甘さだけが気になる。
「これ、味付け海苔の甘さだよね?」
「うん・・・」
味付け海苔は、私は普段大好きだが、蕎麦にかかっているのは初めての経験かもしれない。近所の蕎麦屋では香りのいい、黒々とした海苔がかかっていて、蕎麦にはそっちのほうが美味しいような気がする。
この蕎麦は、蕎麦の香りが全然しない蕎麦だったのか、それともせっかくの蕎麦の香りを味付け海苔が消してしまったのか。(両方、だと思うけど)
ちょっと箸が止まりかけたところへ、しょうが焼き定食がやってきた。
これだけ待たせたのなら、美味しいはずだ! そう思ってお盆を見ると、小ぶりの楕円形のお皿に、薄い薄い豚肉が、醤油で煮た色になってうっすら盛り付けてあった。
いや、盛ってない。醤油ベースの汁の中にただ薄い細切れ肉が平たく存在しているだけだった。
35分も待ったのだから、味はいいはずだ! と、一口もらって食べてみた。
「…………」
「うーん……」
しょうが焼きなのに、「焼き」という熱々感もなかったし、タレが煮詰まって肉に絡んでいる感じも無く、ただ薄い煮汁で煮ただけ、という感じだった。しかも硬かった。
キャベツの千切りとポテトサラダもついていたけれど、それも申し訳程度。だってそもそも載っているお皿が小さめだから。
「お味噌汁は? 美味しい?」と聞くと、
「うん、まあ普通。田舎風というか」
一口もらって飲んでみると、うーん…。確かに田舎風というか、パンチが無いというか、洗練されていないというか・・・。これを「田舎風」と言ったら、本当の田舎の味噌汁に失礼だと思う。何風と言ったらいいのか・・・。
半分ほど食べたおろし蕎麦と、8割以上残っているしょうが焼き定食を見ながら、私は「出ようか・・・」と提案したのだった。
二人で立ち上がり、レジに向う。
いつも、どんな店でも、「ご馳走様でした」と言うのだが、今日はレジの人の目を見ないようにしてそそくさと出た。支払いをしている夫も黙って出てきたそうだ。
帰りに、ローソンでお弁当の蕎麦を買った。
……。
美味しかった。蕎麦はちゃんと蕎麦の香りがした。海苔も味付け海苔じゃなかった。
そして、今夜の晩御飯は、豚のしょうが焼きとポテトサラダにした。
超美味しかった。お肉はふっくらホクホクで、しょうがの香りがして、甘みもちょうどいい。ポテトサラダは芋のホクホク感がして。しみじみ美味しかった。
まずい昼食の敵討ちをしたような気がしたのだった。




★kuunuuさん
ホント、災難としか言いようが無い味でした。半分以上残して出る、というだけで無言の抗議にはなってると思うけど、通じないだろうなあ。
★らいさん
夜の敵討ち、上手く行きました。美味しかったです! まあ、名前は出してないけれど、ブログに書いて鬱憤を晴らし、同情してもらうのも一つの敵討ちですが・・・。名前を出すとさすがに営業望外ですからやらないけど。
★鍵コメントさん
ありがとうございました!
またご連絡いたします。
★よーぷーさん
コンビニの商品開発にかける情熱とお金は、すごいですものね。個人のお店ではそこまで商品開発にお金をかけられないと思いますが、「金額の差」を埋めるのが「情熱」だと思うんですよ。その情熱が感じられない、うすぼんやりした味とセンスだったなあ、と思います。地の利がいいから甘えているんでしょうね。

田中一村展。
私も行きたいと思いつつ、もう終わってしまいますよね。
彼の画集をみて驚きました。
傍で見るとすごい迫力とか(実際に絵画をみた人の感想)
幼き頃は栃木の神童と言われていたのに、なぜか生存中はなかなか認められず・・・
奄美に移り住んでからの自然の絵画が好きですねぇ・・・
極貧のなか、染色工場で働いては絵を描く生活だったそうで。
天才は、生前苦労するものなのでしょうか?
日本画とは思えない緻密でなおかつ大胆な彼の絵が好きですし、それに世間を捨てて絵に没頭した彼の生きざまも「かっこいい!」
田中一村、良かったですよ~。
天才は、やはり世間よりちょっと進んでいるので、認められるまでに時間がかかるんでしょうね。
生きているうちに認められる天才も多いけれど、それって本当に幸せなことですよね。
私も出してないけど水彩画チョコチョコ描いているので、没後認められるかも! な~んちゃって。