2010年 09月 17日
クリスティのハーリ・クイン
私は中学生の頃にはまり、10代で全作品を読んだ。
クリスティが生み出した探偵はたくさんいるが、有名どころではポアロ、ミス・マープル、トミーとタッペンス、そしてハーリ・クインがいる。
ハーリ・クイン物は12作品しかなく、すべて短編なので、知らない人もいるかもしれない。今も覚えているのは、ひし形の模様の服、ダンスが上手い、など。
私はクリスティの中で一番好きな探偵なのだが、映画やドラマになっているのかなぁ? マープル、ポアロ、トミーとタッペンスはよく見かけるのだけど。
さて、22~23歳のころの話だ。
友達数人と話しをしていて、私が「クリスティが好き」だと言ったとたん、そこにいるほぼ全員から「女の子ってみんなそうなんだよね」と言われたのだった。
その場にいたのは、ライターさんや小説家や編集者や、ほとんどがビブリオマニアというか活字中毒を自認するような人たちばかり。
そういう人たちの間では、その当時、「ミステリーが好き」と言うと、クリスティはあまりにも大衆的である、という認識だった、と思う。もっとレアな作家を好きだと言うほうがかっこいい、という風潮があった。
私が続けて「ハーリ・クインが好き」と言うと、その中の一人の男性から大きなため息が出た。
「俺、それってダメなんだよねー。どうしても読めない。女の子ってどうしてハーレクイン好きなんだろうね」
「あ、ハーレクインじゃなくて、ハーリ・クインです」
「ハーレクインだろ、恋愛小説の」
「いえ、ハーレ、じゃなくて、ハーリ、ハーリ・クイン。サタースウェイトという人が出てきて・・・」
「俺ダメなんだよね~」
「俺も、あれは気恥ずかしくて読めないなあ」
「それは、恋愛小説のハーレクインで、それじゃなくて、ハーリ・クインです。らりるれろの、『れ』じゃなくて、『り』です。ハーリ、クイン」
「だからハーレクインだろ」
「だから、『レ』じゃなくて、『リ』ですってばー。ハーリ、ハーリ・クインです。ひし形の模様の服の」
という押し問答がちょっと長く続き、周りの人もうんざりしたのだろう、間にいた別の人がとりなしてくれた。
「まあまあ、たみちゃんは宮崎出身だから、なまってるんだよね」
なんだとぉぉぉぉぉぉ~~~~!?
あ~、今思い出して急に腹が立ってきた!
活字にかかわる仕事している人たちがクリスティの「ハーリ・クイン」を知らないなんて!
当時、恋愛小説のハーレクインが出始めて、ものすごく話題になっていた時期だったから、そっちに頭が行くのは当然だけど、その思い込みから逃れられない頑迷さに腹が立つ。
もう、30年も前の話なのに、クリスティ生誕120周年でつい思い出してしまった。
当時の私は、ハーレクインとハーリ・クインを、私の言い間違いとか訛りのせいにされ、話す気力をなくして、黙ってしまったのだった。20代前半の小娘だったし。相手は30代、40代の、海千山千の編集者とかライターさんで、どう説明してもかなわん、と思って諦めたのだった…。
追記
今調べてみると、英語ではHarley Quinで、日本語読みは「ハーレー・クィン」「ハーレ・クイン」と書く場合もあるようだ。しかし、当時、ハーリ・クイン物は「ハーリ・クイン」としか表記されたものしか出版されていなかったと思う。


ハーリ・クイン好きがいた~~! 短編しかないので、知らない人も多いみたいです。
ちょっと調べてみたら、ハーリ・クインは1920年代に映画化されたみたいですが、DVDにもなってないし、テレビドラマ化は全然されてないようです。ドラマで見てみたいなあ。