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赤星たみこの戯言・放言・虚言日記♪ akaboshi.exblog.jp

漫画家・赤星たみこの日記です。 


by akaboshi_tamiko

近代美術館常設展、面白かった!

先日行った竹橋の近代美術館。
ここは館内で写真撮影が出来るという、日本では稀有な美術館だ。一階受付で申請し、ストロボや三脚を使わない、などの注意を受け、許可の印のステッカーを肩に貼ってらえば撮影OK。なんと素晴らしい!

それから、ここでは所蔵品の解説ツアーが毎日行われているのだ。午後2時から3時まで。知らなかった~。

ガイドの方はボランティアで、それぞれ自分がテーマを作って作品を3点ほど選び、解説をしてくれるとのこと。
この日は「こだわり」というテーマで、尾竹竹坡の「おとづれ」、梅原龍三郎の「ナルシス」、安井曽太郎の「安倍能成像」の三つの絵を解説していただいた。

まず、尾竹竹坡の「おとづれ」から見に行った。
近代美術館常設展、面白かった!_b0019674_4111465.jpg

とても美しい屏風絵で、私はこの絵が大好きだ。

ガイドさんは、この絵と、隣に展示してあった菊池契月の「供燈(くとう)」と比較して解説してくれた。
「尾竹の絵は、屏風絵にしなくてもいいと思いませんか? 隣の菊池契月の絵は、屏風という特質を生かした構図で、屏風絵ならではの構成になっています」と言うのだ。
近代美術館常設展、面白かった!_b0019674_4124374.jpg

菊池契月「供燈」

屏風は、絵が折れ曲がっているので、出っ張ったところ、引っ込んだところががある。
「契月の絵では女性の手が出っ張ったほうに向けて描いてあるので、手が前に出て見えるので、遠近感がよく出ます」と、ガイドさん。

えええええ~~~?
私はこの意見には大いに異議を唱えたい。(実際は黙ってたけど)

屏風の出っ張りに合わせて手を描いた、だから手が前に出て見える。
そこまではよしとしよう。
だから遠近感がよく出ます、というのは違うと思う。

屏風の特質をよく知って遠近感を出すのであれば、右側の柱を女性達の後ろに配置すべきではないのか?
そのほうが、柱がより引っ込んで見えるはずだ。

はい、ちょいとやってみました。
近代美術館常設展、面白かった!_b0019674_4134183.jpg

柱を奥に、女性たちを手前にしてみました。
ほら、このほうが柱が奥に引っ込んで見えるでしょう?
こっちのほうが屏風の特質が生きるし、遠近感が出ると思うのだけど。

でも、そもそもこの絵は左側の平重盛が大きすぎないか?
右側の女性達より後ろにいるはずなのに、すごく大きく描いてある。 遠近感より、権威を出したかったのかもしれないけれど。

こういう描き方って、アカデミックな絵画教育には必ず出てくる方法論だと思う。前に出るものは屏風の出っ張ったほうに向けて描くと良い、貴族を描くときは大きく描くと権威が出る、など。

ガイドの方の解説によると、当時(1910年頃)の画壇では、契月の絵のほうが尾竹竹坡より受け入れられていたらしい。
それは、尾竹が貧しくてアカデミックな教育を受けていないので、画壇の受けが悪かった、ということも話してくれた。

その話を聞いて、私は「尾竹竹坡、アカデミックな教育を受けていないからこそ、常識的な方法論を使わず、淡々と絵を描いたのではないか? と思った。

尾竹竹坡は、性格的にちょっとくせのある人だったそうで、それで嫌われたということもあるだろうが、常識的な方法論を使わなかったところも、嫌われた理由の一つなのかもしれない。
なんてね、わからないけどね。
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でも、これなんて↑↑屏風が奥に引っ込む方向に向けて人物が配置してあるので、進んでいる感じがする。
お供の子供たちは逆に出っ張っているほうに向っている。でも顔がきょろきょろしているので、それもまたこちらに向ってくる感じがして、これはこれで屏風の特質を生かしているように思えるのだけど。
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精密な菊やススキや竹の表現も、着物の柄のようで私にはとても好ましかった。

と、他の作品の話に行く前に力尽きた。
他の作品はまた後日。(下世話な話も、また後日。お楽しみに~)
by akaboshi_tamiko | 2010-11-19 04:15 | アート系 | Trackback | Comments(0)