梅原龍三郎はナルシストか?
まず、「こだわり」というテーマで3つの作品を解説していただいた。尾竹竹坡の「おとづれ」、梅原龍三郎の「ナルシス」、安井曽太郎の「安倍能成像」だが、尾竹竹坡については先に書いた。
http://akaboshi.exblog.jp/14430910/
今日は梅原龍三郎の「ナルシス」について解説していただいたことを思い出して書こうと思う。
さて、これが梅原龍三郎の「ナルシス」である。
ガイドさんの質問
「この絵の男性は何歳くらいに見えますか?」
私は10代後半から20代半ばくらいかな、と思った。柔道とかやってるのかな、筋肉隆々だなあ、と。
「この絵は梅原隆三郎が25歳のときに描いた自画像です」
とガイドさん。
えっ、自画像!?
自画像なら、普通は鏡を見て描くから、絵の中の人物はたいていこちらをじっと見つめている絵になる。
こんな感じの、ね。
これは藤田嗣治の自画像だ。同じ近代美術館の収蔵品で、ここは写真撮影可なので撮っておいた。自画像、というとこんな風に鏡を見て描くのが普通。
なのに梅原龍三郎の「ナルシス」は男が椅子に座って床の水鏡を見ている。鏡を見ている、という意味では同じだけど、それを描くとなると、一旦写真に撮ったのか・・・?
それとも体は別の人をモデルとして座らせて描き、顔だけ自分の顔写真を見て描いたのか?
その場合、自分の体と同じようなモデルを選んだのか? それとも筋肉隆々のモデルを選んだのか?
などと、疑問がわいたのだが、黙っていた。
さて、もう一度この絵を見ていただこう。
えーと、ここから先は下品な話なので、嫌いな方は読まないでください。よろしくお願いいたします(-人-)
「床の上にあるのは水の入った洗面器で、男性の顔がうっすら映っていますね? 泉に映った自分の顔に見とれて死んでしまったナルシスのように、自分をナルシスのように描いているんです。自分をナルシスのように描く人って、どうですか?」
ガイドさんに声をかけられた20代くらいの男性が「いや~、、僕はそれほど自分に自信ないです」と答えた。
周りの人たちの反応は、おおむね同じで、梅原龍三郎はナルシストだ、というような反応だった。
いやいや、私はそれにはすごく異論がある。
私は、まずこの絵を見たとき、股間に目が行った。「こ、これは…、小さめかも?」と思ったのだった。
ナルシストなら、大きく描くのではないか?!
でも、そんなこと、美術館の静謐な雰囲気の中では言えなかったです・・・。 みなさん、そんなこと微塵も思ってなさそうでした。私だけですか、こんな下世話なこと思ったのは?私だけですか、この絵を見てまず股間に目が行ったのは?
……。
家に帰ってきてから、さっそく夫にこの話をした。
夫いわく、
「ちんちんで自信を表すタイプと、筋肉であらわすタイプがいるからな。わざと小さく描いて、筋肉を強調する、という手もあるぞ」
(う~ん、伏字にしたらかえってヤラシクなったので、ここはあえて全部書いてしまいます。下品ですみません・・・)
しかし、わざと小さく描いて筋肉のほうを見せたがるとは!!
(いや、ホントにそうかどうかはわからないけど)
筋肉をモリモリにするボディビルダーは、股間にコンプレックスがある人が多く、それを筋肉を鍛えることで解消しようとしている、という説がある。この説、まことしやかに言われているが、実は全部が全部そういう人ばかりとは限らない。
筋肉を鍛えるということは、血液がどんどん筋肉に行ってしまうので、股間に集まらなくなる(足りなくなる)、だから小さくなってしまう(または小さく見える)らしい。
この絵の筋肉の描きかたは、絵の具を何色か、キャンバスの上で混ぜて色を作るという描きかたで、ちょっと離れて見るほうが筋肉の盛り上がり方がよくわかる。
その筋肉への思い入れは、確かに「フェチ」なのかもしれない。
そうか、股間自慢ではなく、筋肉自慢だったのか。
なんてね、これ、私の独断ですから。本気にしないように。
追記
ミクシーのほうで、先にこの日記をアップしたのだが、それには「寒かったんだと思います」というコメントがついた。
そうか、寒かったのか!
私が疑問に思ったのは、「なぜ、このポーズ?」ということ。なんで足を広げているか不明。これだけ足を広げるのなら、もっとちゃんと描け、と思った。ぼやぼやですよね。公序良俗に反すると思うなら、こんな無理な姿勢にしなくてもいいように思うんだけどな。
筋肉は鍛えれば鍛えるほど、常に血液を必要とするから。血液が必要な「時」があるのは海綿体。
脚を広げたポーズは、脚を立体的に見せるためのポーズだと思う。写真のモデルも、洋服をきれいに見せるために、実際にはそうは立たん、という姿勢でポーズをとるけど、そういうものじゃないかな。
でも、こんだけ股を開いているのに、これはやっぱりちょっと小さめだなあ。と、やっぱりそこに目が行くわたくし。おほほほほ。太ももの筋肉を描きたかったんだと思う。
ガイドさんが、「この絵が神話に見えないのはどうしてだとおもいますが?」という質問もしたんだけど、私は充分神話に見えるけどなあ。というか、神話から題材をとった絵、に見える。美しい森の中⇒室内 美しい泉⇒洗面器 神話風の衣装⇒筋肉 という風に、神話的な美しいものを世俗的なものに置き換えてみました、という絵。それでこんなに股間のことを言われるとは、想定外だっただろうなあ。