2015年 03月 23日
グエルチーノの時代とマンガブーム

(西洋美術館、常設展での展示作品あれこれ)

(こちらも常設展での作品あれこれ)
なんでこんなにたくさんの天才がヨーロッパ全土から出てくるんだろう? という話をしていたら、「パトロンが多かったからな」と、夫。
有名どころではメディチ家。
銀行家、政治家として、莫大な資産を持っていたメディチ家は、ルネサンス期のイタリア・フィレンツェに君臨し、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ヴァザーリなどの画家たちのパトロンとして、彼らを支援していた。
ほかの国でも王侯貴族たちが、自分たちの権威や富の象徴として美術品を飾ることが多く、そのため、作家に作品を作らせるという、結果的に芸術家たちを支援していた。いい時代だなあ・・・。
「金が集まるところに天才は集まるからな」
「そうだよね! 日本のマンガが70年代~80年代にものすごく発展したのは、その頃は雑誌が売れて、漫画という文化にお金がどんどん入ってきたし! 天才、集まるよね!」
その前の60年代は、映画に多くの人材(人財、と言ってもいい)が集まっていた。日本ではその時代、映画最盛期で、多くの映画が撮られていた。日本人の最大の娯楽でもあった。そんな時代だから、映画をやりたい人がどんどん映画の世界に入ってくる。流入する人材が多ければ多いほど、山の裾野が広ければ広いほど、山は高くなる。つまり天才も輩出してくる、というわけ。
そして、日本ではそれ以前からマンガの分野にいた天才たちが、60年代から徐々に売れ始めていた。それまでもいい作品をどんどん書いていたけれど、売れる、儲かる、と言う時代になったのは60年代くらいからかな。雑誌も多く創刊されたし。
そして、70年代に漫画に人材が集まってきたのは、マンガというジャンルがすごく面白くて、それだけ流入してくる人材がどんどん増えてきたこともあるし、それプラス、やはりマンガが儲かっていたから。
雑誌を買ってくれる読者が多かった。つまり、読者の一人一人が漫画家のパトロンになっていたのだ。
一人の人間が億単位のお金を出して芸術家を支えるのではなくて、極端に大勢の人間が雑誌代という数百円を支払って、作家を支えてくれたのだ。
いい時代だなあ。本当にいい時代だった・・・。私ですら、その多くの読者のパトロネージュにより、漫画家生活が成り立っていたわけだから・・・。
(私の単行本を買う人は少なかったけれど、雑誌を買うこと(ほかの作家目当てだけど)ことによって、私にも原稿料が入ってきた、というわけ)
作家とパトロンのいい関係が中世ヨーロッパの芸術ムーブメントにあり、それと同じものがと70年代日本のマンガブームにも!
な~んてね、ちょっとこじつけてますが、雑誌が売れないこの時代、グエルチーノの時代の作家の名前をあれこれ見ていて、こんなことを思ったのでした。