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小さなモノを作る、大きなモノを作る

もう30年ほど前、私がアメリカ一人旅をしていたときの話です。

サンフランシスコのとある街角には大小いくつものアートギャラリーがあって、私は目についたギャラリーにどんどん入って行きました。

ある画廊で見た作品を、私は今も覚えています。30年経っても忘れないのは、二つのギャラリーがあまりにも正反対で、この二つは完璧な一対のセットで、今も忘れられません。

一つはアメリカ人作家の作品で、布製の巨大なハンバーガーでした。

いやー、直径2m位はありそうな、布のハンバーガーですよ。
ハンバーガー型のクッションと言ってもいいかも。バンズに使われていた茶色のサテンの生地、レタスの緑色のサテンの生地が、今も脳裏に焼き付いています。

決してリアルではなくて、単純な形のハンバーガー。
でもデカい

確か、そんな作品がいくつか展示してありました。

それだけだったら忘れていたかも。
だけど、その隣のギャラリーで、まったく逆の作品を見たのです。

隣の画廊は、近所にチャイナタウンがあるせいか、ちょっと中国っぽいギャラリーだったように記憶しています。

そこで見たのは、日本人作家(と言うより、日系2世か3世くらい?)の作品でした。(確か、日本人っぽい名前が付いていたように思います)

これがまた、米粒に面相筆で細い細い文字をびっしりと書いたものでした。

米粒、一つ、ですよ! 一粒のお米に、ほっそい線の、小さな小さな文字が、ぎっしり!!

もちろん拡大鏡がセットしてありました。拡大鏡越しに見ると、小さな文字がくっきりと浮かんで見えて、思わず息を飲むくらい精密。

ほかのお客さんたちもwow‼とか言いながら見てました。

そのほかにも、ものすごく精密な切り絵もあって、これも息を飲む小ささ

いや、、、私はアメリカ人作家の巨大ハンバーガーと、日本人作家の米粒アートの二つを同時に見て、ホント、いろんなことを思いました。

日本人は対象物の中にズンズン踏み込んでいくというか、グーッとミクロ方面へ集中していくんだなあ。
アメリカ人は対象物をぐんぐん引き伸ばす、というか、巨大化させる。
アートの方向性が正反対というか、違いがあるんだなー。

日本が戦後、ものすごい経済発展を遂げたのは、工業製品でのモノ作りがうまく行ったからだと思う。機械産業やIT産業もうまく伸びていったのは、モノを小さくすることが得意だったからではないか。そんなことも考えました。

日本人の「小さなモノを作る情熱」は、いろんなところに現れていると思う。トランジスタの部品、ICチップなど、小さな部品を作らせたら日本人、超うまい! もしかしたら、小さなモノを愛でる心が、ほかの国の人より強いのかもしれない。米粒に文字を書いたりできるし!

もちろん中国でも米粒アートや超緻密な切り絵もあるけど、ほら、中国は国土が広いでしょ。小さなモノをあえて作らなくてもいいくらい、国土が大きいわけです。

でも日本は国土が狭いので、モノや道具は小さいほうが効率的に収納できます。
それから、日本は昔、中国の寺院や公園を真似て作ったとき、同じ大きさではなく、小さくして作った、という事例がたくさんあります。それは、国土が狭いから、ということも影響しているし、小さいモノが好き、と言う国民性もあるのではないかと、私は思っています。

そして、デザフェスで見た小さな人形やミニチュアの家具。緻密なアクセサリー。
これぞ日本の伝統芸!

デザフェスで、ホントのクールジャパンを見た気がしたのも、そういうところからなんです。
いや~、デザフェス行って。久々に30年前のアートギャラリーを思い出したのでした。面白かったな^。
by akaboshi_tamiko | 2015-05-18 23:42 | アート系 | Trackback | Comments(0)