赤ちゃんの仕事
女の子は小声で歌を歌ったりしてご機嫌な様子。だけど、赤ちゃんのほうはときどきぐずっています。
しばらくすると赤ちゃんがウエーーンと大きな声で泣き始め、手足もバタバタ動かして暴れ出しました。
お母さんは慌ててアレコレあやしたけど、なかなか泣き止みません。
えーっと、どうしようかなあ、懸命にあやしているお母さんを焦らしちゃいけないし、でも私の出る幕はないし、、、、と思ったんだけど、ふと先日乗った新幹線で、友だちが子供にガンガン話かける姿を思い出しました。
そうか、おばちゃんは子供に話かけても怪しまれない!
チラリと女の子のほうを見ると、その子も私をちらりと見あげています。
「あの子、弟クン?」と聞くと「うん」とこっくりうなずく女の子。
「そっくりだねえ」「うん」(やっぱりよく言われてるんだろうな)
「赤ちゃんは泣くのが仕事だからね」
「どうしてー?」
「赤ちゃんはね、言葉ができないから、泣いて、ここが痛いとかかゆいとか眠いとか教えるの。それが仕事なの」
「うん」
「泣いてるときはね、仕事しているから、弟クンに『働き者だね』って言ってあげて」
「うん」
「あとね、お母さん、疲れているから、お母さんのお手伝いもするんだよ」
「うん」
(この時、泣き声がひときわ大きくなる)
「赤ちゃん、いっつも仕事してるね」
「ねてるときも?」
おお、いい質問ではないか!
「寝てる時はね、赤ちゃんはみんなを楽しくさせる仕事してるの。赤ちゃん見てると楽しいでしょ?」
「うん」
「だからね、赤ちゃんは寝てる時はお笑いの仕事をしてるの」
「テレビにでるみたいに?」
「そうそう」(カンのいい子だなあ)
「赤ちゃんいると楽しいよね」
「うん」
この頃には赤ちゃんはすっかりご機嫌になっていました。
そして、この家族が降りる駅に到着。お母さんは私にちょっと会釈して、女の子は「バイバーイ」と手を振って降りて行きました。
それにしても、大人はいつも「赤ちゃんは泣くのが仕事だから」とか「子供は寝るのが仕事だから」という言い方をするけど、それって大人同士にしか通じない言い方なんだなぁ、と思いました。
漫画家も、寝るのが仕事だったり、マンガ読んでダラダラするのも仕事のうち! ということにしておこう。多くの人には通じないかもしれないけど。