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着物のドレスコード

2月4日のTPP調印式に、高鳥修一副大臣が着物姿で出席しました。

これに賛否両論噴出しているようです。
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賛否の「否」の意見は、こんなところで一人だけ着物で浮いていて恥ずかしい、というようなもの。

浮いているかどうかは別として、一人だけ民族衣装で出席すればそれは目立つでしょう。
それは特に悪いことだとは思いません。


ほかの意見としては、正式な調印式に略礼装で出席したことがみっともない、黒紋付きで出席するべきだ、というもの。

しかし、海外の式典で黒紋付きを着る、という条件で私が真っ先に思い出すのは、このシーンです。↓↓↓
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ノーベル賞受賞式で川端康成氏が着用している着物が黒紋付き。周りはホワイトタイの燕尾服です。

先のTPP調印式では周りの人たちはビジネススーツです。
もう一度出しましょう。↓↓↓
女性も男性もみんなビジネススーツです。
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もし、この中にいる女性二人がローブデコルテやイブニングドレスを着ていたら、どう思いますか? または男性が一人だけ燕尾服を着ていたらどうでしょうか? 多分、多くの人が違和感を覚えるのではないかと思うのです。あまりにも正式過ぎて。

私はもし、この場で高鳥副大臣が黒い紋付きを着ていたら、それと同じような違和感を覚えます。

逆に、周りが全員タキシードや燕尾服やローブデコルテだったとしたら、黒紋付きじゃないとダメだと思いますが、周りはビジネススーツですよ?
この場なら、この茶色い着物、黒っぽい(焦げ茶?)羽織、紺鼠の袴、全然問題ないと私は思っています。色味も落ち着いているし。

ただ、私の着物の知識なんてたかが知れているので、呉服屋さん、着物販売業の方、着物の専門家の方にも尋ねてみました。

私が聞いた範囲では、「この着物に特段の違和感は感じない」とか、「いいことだと思う」といった「賛」の意見をいただきました。

よかった! 専門家も、この着物に違和感は覚えていないようですし、ドレスコード的に間違ってはいないみたい!

しかし・・・。

男性が人前で着物を着ることに関しては、ものすごく高いハードルがあるように思います。
着物を着ていくと「不真面目」だとか「遊び」だと思われてしまう、という風土があるのです。

・私の知り合いの県会議員さん(男性)も、支援者の会合に着物で行ったら「ふざけている」とお叱りを受けました。

・私の夫も、着物姿で仕事に行こうとしてクライアントさんに反対されたことがあります。(私はOKだったんですけどね)

男性が仕事の場で着物を着ることは、本当に難しいです。
特に、それが海外だと、さらにハードルが上がります。

誰もが着物を愛しているからこそ、世界に誇れるよう、一点の曇りもなく、小さな傷もなく、100%正しい着物姿でいてほしい、という気持ちがあるからハードルが自然に上がるのだと思います。

ハードルを上げて、間違いをなくすのは決して悪いことではありませんが、略礼装にもいろいろあるし、遊び着の要素を持つ略礼装ももちろんありますが、そこだけ強調するのはいかがなものかと思います。

とにかく、「略」とついているばっかりに、遊び着だと思われているのがかわいそう。ビジネスの場でも十分通用しますから!

今回の高鳥副大臣の着物姿は、その着物の格の問題だけでなく、TPPに対する考えも個々人で違うし、純粋に着物の問題だけではなくなっています。今回は、着物の格とかスタイルの問題だけで考えてもらいたいです。TPPに関する考えは、またいずれ別項目でやるかもしれません…。
by akaboshi_tamiko | 2016-02-09 01:54 | キモノ | Trackback | Comments(0)