2017年 06月 27日
岸田劉生・切通之図の消失点

水平と垂直しかない絵だと消失点は必ず一点に結ぶけど、斜面の消失点はそことは違うところに結ぶので、消失点が二つあるのはあたりまえ。驚くことではありません。
しかし、この番組では、岸田劉生はなぜ消失点を二つ作ったのか、ということを考察していました。横の塀と崖の消失点と、坂道の消失点が違うことに対して、なにか意味があるのでは、というような考察をしていたのです。そして、消失点を合わせた場合の絵も作成していました。

ちょっと検証してみますね。
水平、垂直の面だけでできた下の図は一点透視図法で描いてあります。赤い横線はアイレベル(視線レベル)とか、ホリゾントラインなどと呼ばれます。中心の十字が消失点です。

この左右にある立体に斜めの線を入れてみます。




これが岸田劉生の「切通之図」です。消失点が二つあることによる揺らぎとか不思議な感覚、、、、私には感じられません。
でも、この絵からは別の不思議な感覚を感じます。

大人になってから見ると、不穏な感覚とか、嫌な気持ちは消えました。子供のころだけのわけのわからないものに対する怖れが、大人になって薄れたのかもしれません。緻密に描かれた画面の迫力とか、画力に圧倒されるようになりました。
この絵を見て、何か異様な感じや不思議な感じを受ける人がいたら、それは消失点のせいではなく、あなたの持っている感受性の高さのせいだと思います。

それに引き換え、たみこさんの検証、素人にもとてもわかりやすかったです。ありがとうございます。
そして、私がこの絵を見た時の感想は、ここは新興住宅地で、これからどんどん開発が進んでいく土地っぽいのに、左側の石垣がさほど新しそうな印象もなく、こんな立派な石垣を作る家があるにしては道は舗装されておらず、一体どういう町で、どんな人が住んでいて、そもそもなんで道も舗装されていないようなこんな未開発っぽいところにいち早く立派な石垣を作ってしまったんだろう、とかそんなことを思ったのを思い出しました。
説明がわかりやすかったとのことで、うれしいです!
透視図法って、わかっている人にはすごくわかりやすい概念なんですが、知らない人は難しく考えすぎるような気がします。
漫画家は室内やビル群や街並みや海山川などを描くので、理屈より先に、見た目で描くことを覚えます。それから理屈を教わると、すっと腑に落ちます。
理屈から入ったけど、実際に描かないとか、理屈に当てはめて風景を見る訓練をしていないと、一点透視図法だと消失点は一つだ、ということだけが印象に残って、二つあるとすぐ「意図的だ」とか思うんでしょうね。