ファッション関係の人ですか?
これは寄席ではなく、すき焼き屋さんのお座敷で柳家喬太郎師匠の落語を聞き、その後、師匠を交えてすき焼きを食べるという、豪華なイベントだった。
会も終わり、その後、家へ戻る車の中で夫がポツリポツリと話し始めた。
「今日、俺の前に座っていた人、いたじゃん?」
「うん」
「その人がさ、俺を見てさ…」
「うん?」
「……」
車を運転する夫は、師走の高速道路で事故を起こさないよう、ハンドルを慎重に操作していた。あまり飛ばさず、無理な運転をせず、事故らないよう、落ち着いて運転しているように見えた。
ちょうど車が途切れ、前後左右には一台の車も見えない。
「その人が俺を見てさ…」
「うん」
「フ……ファッション関係の人ですか…って」
ええええええええ????????
ふ、ファッション関係の人!!!???
夫は注意深く運転していた。しかし、その言葉を言った瞬間、プーッと吹き出してしまい、顔がゆがみ、大笑いしている。
私も、あまりのことに大笑いした。
「俺、今日の服、全部ワークマンなんだぞ!!」
おおおお! ワークマン!
WORKMANは主に現場作業や工場作業向けの作業服・関連用品の専門店である。寒風吹きすさぶ屋外の工事現場でも寒くないよう、風を通さず、保温性の高い機能的な服ばかりだ。
そんなガテン系の服を着ていた夫が、ふぁ、ふぁ、ふぁっしょん関係の人に間違われたとは!!
夫はきっと、この話をするのに、周りに車がいなくなるタイミングを計っていたに違いない。笑って危ないもんね。
この話、何人かに話しているのだが、姪っこに話したとき「しんちゃん、顔がおしゃれだから」と言われてまた大笑い。
まあ、確かに、ひげがあってスキンヘッドだと、普通の会社員には見えないしね。
それにつけても、本当に意表を突く質問だった。
その後、一か月たった今も、うちでは「ファッション関係の人ですか?」と言っては大笑いしている。
ちなみに、こちらは喬太郎師匠と私。私は全身シマムラである。