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アンという名の少女の時代背景

「アンという名の少女」に原作にはないエピソードがたくさんある。原作にいないキャラクターも多い。
その一人がセバスチャン(バッシュ)という人物。

ネタバレ含みますので、シーズン2をまだ見ていない方は読まないでください。

肝心なところが見えないよう、リンド夫人のイラスト置いときます。
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これで肝心の部分はスクロールしないと読めない…はず…。大丈夫かな。
ネタバレ嫌いな人は先を読まないでくださいね。

さて。
セバスチャンは、ギルバートの友人だ。
ギルバートが釜焚きとして船に乗って働いていた時の同僚で、トリニダード出身の黒人である。
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シーズン2の2。
バッシュが町を歩いていると、使用人と間違われて「馬をつなげ」と強要される。彼は相手に向かって「1834年から自由民だ!」と叫んで拒絶する、というエピソードがあった。

1834年?

なんで1834年なのか、知識がない私はすぐに検索した。ネットってありがたい(-人-)

イギリスでは17世紀初頭に農奴制が廃止されている。
1772年に法的に奴隷解放が行われた。

しかし!! 英国領のアメリカ、西インド諸島では奴隷が生活の一部で、そのまま残っていたとのこと。
(西インド諸島、まさにバッシュの生まれ故郷トリニダードも含まれている)

そして、1833年。奴隷制度廃止法が成立。
1834年に奴隷は開放された。

(実はローワーカナダ(ケベック州など)では1803年に奴隷制は廃止されている。でも1834年まで奴隷状態で残っていた人もいたとのこと)

つまり、バッシュが言う1834年から自由民だ、というのは法的に正しい。
ドラマの中ではギルバートと仲良くなり、アン、マリラ、マシュー、リンド夫人からも受け入れられる。

当時はそういうことは珍しいことだったかもしれないけど、ありえない話ではない、と思った。

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アンとバッシュもすぐ打ち解ける。アンのとてつもなく無邪気な、偏見のない、透明な心から出た言葉を、バッシュは素直に受け止める。周りはギクッとしていたけれど。

こういう時代に白人と黒人がここまで対等な関係になるなんてありえない、と思うのは失礼な話で、そういう可能性はゼロではなく、実際、対等な関係を築いた人たちもいたと思う。

しかし……
エンターテインメント(ドキュメンタリーや歴史書じゃない)ものを描くにはいろんな問題がある。
史実だけではカタルシスは得られない。

差別行為を「事実だから」と描いてしまうと、それを肯定しているように見える危険性があり、差別や偏見のない人たちを描くと差別がなかったかのように見えてしまう危険性がある…。

本当に、知識がなくて、いろいろ調べてみて驚いたり、無知が恥ずかしくなったり、子供のころ赤毛のアンのシリーズを全巻読んでいるのに気づかなかったことを、ドラマが気づかせてくれたように思う。
(というか、こういう視点は原作とは別物、なんだけどね)
(女性解放的視点は原作にもちらほらあるけど)

Commented by rinrin1345 at 2020-10-23 16:50
ホント、何を読んでいたのか?と思うことばかり。中学の時担任が国語の先生で教室に色々本を置いてくれ、赤毛のアンのシリーズ、紫色の箱入りだったような、夢中で読みましたよ。中身が大人になると中学の時はイマイチだったような。後でアニメ化したものをTVで見て、それはそれで素敵でした。
Commented by akaboshi_tamiko at 2020-10-28 12:35
★rinrin1345さん
ドラマは原作にないエピソードで新たな視点を入れ込んでいるので、新しい発見があるのは当然として、原作の良さ、問題点も見つけられて、よかったと思いました。

昔の本は、書かれた当時はOKでも、時代が変わるといろいろ問題が出てきますね。

by akaboshi_tamiko | 2020-10-23 00:47 | Trackback | Comments(2)