正直であること
正直に生きることは大切なことですが、常に真っ正直に何でも思ったことを口にすることは、果たしていいことでしょうか。
私のところにはいろいろなお便りが来ます。
また友人の小説家のところにもファンレターなどがたくさん来ます。
友人のところに、こんなお便りが来たそうです。
「初めまして。私はあなたの本は読んだことが無いのですが、雑誌を見たら載っていたので興味を持ち、早速●●の本を買いました」
とか、
「初めまして。私はあなたの本は一冊も買ったことが無いのですが、図書館で読みました。●●を読んだらとても面白く、感激しました。」
設問1
さて上記の2通のお便りの中で、不必要な文章はどれでしょう?
設問2
手紙を書いた人の言いたかったことはなんでしょう?
1の答え
もちろん、太字の部分です。
せっかくファンレターを出そうと思ったのだから、本を買ったこと、面白くて感激したことを伝えればいいことで、本を読んだことが無い、ということをあえて言う必要はないと思います。
2の答え
もちろん、ファンレターですから、後半の「興味が出て早速●●という本を買った」こと、「●●を読んだら面白く、感激した」ということが言いたかったのでしょう。
なのに、なのに、どうして人は真っ正直に「あなたの本は読んだことが無い」「買ったことが無い」「図書館で読んだ」ということを告白するのでしょうか。
私も友人の小説家も、本を売って生活しています。売れないと生活できないんです。
そういう本を打って生活している人に、「あなたの本は(ただで読める)図書館で読みました」と、あえて、わざわざ告白するセンスが私にはわからないのです。
それはたとえて言えば、美味しいお菓子を作っている菓子メーカーに「私は今までおたくの会社のお菓子は、いつも試食コーナーでしか食べたことがありませんが美味しいですね」と言っているようなものです。
どうしてそんなに真っ正直に生きられるのでしょう。
私にはそこまで真っ正直に、頭の中の言葉をそのまま書いたり、言ったりすることはできません。
何もうそをつけ、と言っているわけではありません。
「あなたの本はもう全部持っています。どれも面白く、特に●●は最高です!」と書け、と言っているのではないのです。
●●が面白かったのなら、そこだけ書けばいいじゃないか、と言ってるんです。
思ったこと、頭に浮かんだこと、実際に起こったこと、これらを全て真っ正直に書く必要は無いのです。
必要なことだけ書いてください。
あまりネガティブなことは書かないでください。
もしあなたが、誰かにファンレターを出す場合、特に「著作を売って生活している作家」に出す場合は
1.今まであなたの本は読んだことが無いが、○○を読んだら面白かった。
2.今まであなたの本は買ったことが無いが、○○を読んだら面白かった。
3.○○を図書館(または、立ち読み)で読みましたが、面白かった。