救急車が病院へ到着するとすぐにストレッチャーで別室へ運ばれて、病院のスタッフたちがわらわらと周りに集まってきた。
まるであの伝説の医療ドラマERを見ているような光景だった。そしてあの有名なセリフ「ここはティーチングホスピタルだから」が頭に浮かんだのだ。ティーチングホスピタルとは実際の現場で医学生を教える病院。
事実、私が搬送されたこの病院は看護学校が併設されたティーチングホスピタルなのだ。
私の目には周りをぐるっと取り囲むスタッフの方たちの上半身と天井のライトしか見えてなかったけど、大半は学生さんかもしれない。
ストレッチャーに乗せられたままの私に、スタッフたちはてきぱきとトレーナーをめくって心電図のパッドを貼り、別のスタッフがそのままトレーナーとTシャツをするりと頭から脱がせ、さらに「これから検査しますから金属のものは外してください」と言われ耳のピアスを外すころには下半身(ジーンズとパンツ)も同様にするっと脱がされた。
つまり、全裸。
多分、脱がせにくい服だったらハサミでじょきじょき切られていたくらいの緊急性だったのだと思う。
医師や看護師やいろんな人が周りを取り囲み、下半身には尿道口から膀胱までのカテーテルが入れられた(これは女性だった)。
この時、「ああ、これ漫画にするなら全裸は差しさわりあるから猫のキャラで描こう…」と思った。漫画家魂というか、習い性というか、45年の漫画家生活でしみついている「なんでもネタにして元を取ろう!」という貧乏臭さだ。
そこからストレッチャーは動き始め、次の場所で心臓カテーテルでの検査が始まった。(多分、そうだと思う。記憶を掘り起こしている)
周りに大きなモニターが設置されたり、いろいろなものが目まぐるしく動いていた。
「寒いです…」と訴えると、ストレッチャーが温かくなってきた。ストレッチャーなのか、手術台なのかわからないけど、少しずつ寒さが薄れてきて、すごいハイテクだなあと思ったのを覚えている。
あとで夫に聞くと、この時、夫は「心臓にカテーテルを入れて検査します。緊急手術になるかもしれません」と言われ、何枚もの同意書の書類にサインしたそうだ。
ふう…。書くのも力尽きた…。
続く…。