2007年 01月 30日
生活の中の科学と化学
数年前のことです。
ある講演で、酸性石けんの話をしました。
酸性石けんとは、石けんが、酸性の汚れと中途半端に結びついたもので、べとべとして、なかなか洗い流されなくて、排水口にこびりついたりする、やっかいな物質です。
酸性の汚れを落とすためには、石けんをちょっと多めに使うことが大切。
石けんをものすご~~~く多く使え!と言っているのではなく、汚れの量より、ちょっと多めに使うほうが、酸性石けんが発生せず、すっきり洗いあがるのです。
そして、食器洗いをする時は、石けんで洗った食器をすぐ水につけると、せっかく今、食器のうえで油を分解している石けんが、水で薄まり、酸性石けんが発生しやすくなるので、水につけないほうが無難です。
でも、すすぐ直前まで絶対水がかからないようにしろ、というのではなく、お皿を石けんをつけたスポンジで洗ったら、重ねておいて、上の食器から順番に流水ですすげばいいんです。
水につけておいたほうがうまく洗える、という人もいますが、それがどうしてうまくいくのかは、洗い方が上手だ、としか言いようがないんです。もちろん、水に浸ける、浸けないは自由ですから、自分のやりたいようにやればいいのです。
という話をしたところ、会場から質問が出ました。
「酸性石けんのことを石けんメーカーに問い合わせたら、酸性石けんは空気と結びついて出来るので、水に浸けたほうがいい、といわれたんですけど」と。
その方は、石けんメーカーに電話して聞いたそうです。
そうしたら、電話して受付の人から次に代わった人が、上記のように答えたそうです。
答えた方は、石けんメーカーの、どの部署の方だったのでしょうか・・・・・・・。
酸性石けんは、空気と結びついて出来るのではありません。
空気と結びつく、というのは「酸化」です。
石けんが酸化することと、酸性石けんが出来ることはまったく別のことです。
空気と結びついて酸性石けんが出来るのであれば、世の中の石けんの表面は全て酸性石けんになってしまいます。そんなことはありません。
石けんメーカーの人でも、酸性石けんを知らない人がいる・・・・・・。
これは私にとってかなり衝撃でした。
自分が、「汚れ落とし」のメカニズムが面白くて、いろいろ調べていくうちに「酸性石けん」とはどういうものかを知ったわけですが、石けんメーカーの専門家でそれを知らないはずはないと思います。
でも、このケースの場合は、消費者の質問に専門家がちゃんと答えないで、たまたまそこにいた営業畑の人が答えたのかもしれません。
メーカーの言うことを、100%鵜呑みにしてはいけないと思います。たまたま、その件に関しては素人の方が答えた、ということだってあるのですから。
私も間違ったことを書かないよう、言わないよう、気をつけなくては・・・・・・・・・。

酸性化と酸化の違いを知らない人はいるかもね。
私の知ってる某中堅石鹸メーカーの営業の奴も、石けんのミセルに関して訳の解らない事をえらそうに言ってたしなぁ。
「石けんを増やしてもミセルは変わらない」って。もう化学どころか日本語にもなってないですよ。水の硬度や温度、石けんの種類、汚れの量によっても変わるだろが。取り巻く条件を無視するとはアホかと思いました。
石けんメーカーの営業の人だからといって、油脂化学や界面活性剤化学に精通してるわけじゃないですから。
肩書きではなく言ってる事がどうかを吟味したほうがいいですよね。やっぱり。



肩書きがある方のお話はつい鵜呑みにしたくなりますが、自分で勉強することも必要だとつくづく思いました。
洗う前に水(お湯)につけるかどうかはあまり問題ではなく、洗ったあとに(すすぐ前)に水につけるかは、かなり重要になってきます。
洗ったあと(すすぐ前)に、温かで、十分な濃度のある石けん水につけるのは問題ないんですけどねー・・・。
水につけるのは、べたつく場合が多いですねー。
石けんを使っていて不都合が出たら、メーカーの技術畑の人に聞いたほうがいいと思いますけど・・・。
生協の人でも、「環境にいいから使いにくい石けんを我慢して、使っているので、よりより合成洗剤が出たら、そっちのほうがいいと思います」とはっきり明言している人もいます。
そういう人に「これこれの不都合が出たらどうしたらいいですか?」と聞くと、「不都合が出るのは仕方がないので、我慢するか、重曹をくわえるといいと思いますよ」という、間違った答えをする人もいます。(いや、ホントに、そういう答えを実際聞いたことがあります)
メーカーの方でも、古い理論で石けんを作っているところもあるし、実際に使って、問題を克服した人に聞くのが一番ですね。
